初歩的な話であるが、同じような説明が繰り返しなされるので、基本的な反論をここで確認しておきたい。
一ヶ月前頃の日曜朝のテレビで竹中平蔵氏が大塚副大臣に対し何度も「郵政民営化によって地方の郵便局が減少した事実はない」と反論していた。大塚副大臣はなんらその事実に対し再反論することは出来なかった。なぜなら事実が竹中氏の言うとおりだからである。郵便局の減少は日本郵政公社時代までの出来事である。強いて言えば丸二年間の日本郵政株式会社の時代に郵便局の大きな増加はなかった。しかし、公社時代までの郵便局の閉鎖が反転し部分的な再開など「改善」の試みはなされていた、そういった段階であったと民営化の二年間は総括できるのだ。
しかし、例えば『週刊ダイヤモンド』11/14号の郵政見直しに関する記事に典型的に見られるように、以下の引用によるような郵政民営化批判が鸚鵡返しように無批判に繰り返されてきた。
《・・・・・郵政民営化の見直しについては、終始、民主党よりも国民新党が主導権を握って議論してきた。彼らが見直しに動いたのは、郵政民営化の弊害が如実に表れてきたからだ。》
民営化批判の欠陥の最大の特徴は、時系列の意識的なとしか言いようのない混乱、無視である。国民新党はその新党結成の経緯からして郵政民営化自体のアンチテーゼ、見直しありきの存在であって、『民営化の弊害』の出現に促されて『見直し』に動いたわけではない。『見直し』のためには『民営化の弊害』をなんとしてでも探し出したり、作り出したりせねばならぬ運命、宿命、使命がある立場なのである。
ここに国民新党の支持基盤、特定郵便局の立場も重なるのであり、その使命は小泉郵政民営化二年間における郵政事業当事者として面従腹背そのものではなかったか。次センテンスにおける『利便性』の行方はまさに彼らの掌中に委ねられていたはずであろう。
《利益優先主義が徹底されるあまり、地方の不採算地域を中心に、郵便局の統廃合が行なわれたり、郵便局員が削減されたりして、地方に住む人びとの利便性が著しく損なわれるようになった。》
冒頭で触れた如く、こういった文脈における時間的な因果関係の意識的な無視は『民営化の弊害』のフレームアップそのものである。『郵便局の統廃合』は民営化スタート時までに完了していた。郵便局員の自然減ならぬ削減の実態はなく、彼ら準公務員としての身分継続がこれからどうなるかは官僚OBの斉藤新社長の意向に左右されるだろう。
《また、独立採算の四分社体制に限界も見え始めた。郵便の集配業務に従事する局員に、郵便貯金の引き落としを頼むことができなくなるなど、とかく過疎地の住民の利便性が損なわれた。》
今年度NTTに次ぐ法人税の納税を果たした会社の体制の限界が『見え始めた』としての真っ先の例示が民営化以前より原則禁止の集配業務と貯金業務の兼務事例とは恐れ入る。どのような体制になったとしても個人的な信頼関係でリスクを覚悟に「親切心と依頼心」で行なうしかない行為をもって『過疎地の住民の利便性』を解決してしまってはならないだろう。このようなやり方でのサービスが普遍性を持たない事くらい、都会では想定されえない、あったとしたら気持ち悪いサービスであることくらい書いてて分らないのか。続けてこう述べる。
《すなわち、全国津々浦々において同一サービス(基本は同一料金)を提供する、という〝ユニバーサルサービス〟の実現が難しくなってしまった。》
過疎地におけるサービスの水準を全国一律でする事自体ナンセンスである。郵便、貯金、保険の一体サービスにしても過疎地、離島など地域の特性に合ったサービスは決して全国一律と言う様な中央集権的な考え方に基づくのではなく、郵政事業の個々のお客さんを大切にする視点より様々なサービス展開を個別対応できるよう全社を挙げて資源投入する経営を目指すべきだろう。〝地域主権〟の下での〝ユニバーサルサービス〟とはそのようなものではなかろうか。
《郵政民営化の弊害が、〝地方切り捨て〟となって表れたことに危機感を抱いた国民新党が、民営化見直しを強く訴えたのである。その方針は、生活者保護、地域主権をモットーとする民主党の基本理念とも合致する。》
国民新党は〝地方切り捨て〟の尻馬に乗ってその自らの演出を民営化見直しの目的に利用した。特定郵便局の住所こそが1丁目1番地であった。地域主権が基本理念の民主党はむしろ官僚OBをトップにいただく全国一律の中央集権と闘わねばならない立場であり、国民新党に己の基本理念を骨抜きにされているという危機感を持たねばならない。
民営化以前の郵政事業には一銭の税金も投入されていなかったという神話がいまだに語られているが、『ダイヤモンド』記事の同じページには郵貯に対する利子補填の形で丁度郵政の人件費相当額の税金が投入されてきてた事実が高橋洋一氏の言として紹介されている。かように郵政民営化における議論は未整理のままあたかも判断停止のカオス状態で正当な評価がなされていない。あまりに国民新党やら『かんぽの宿』鳩山邦夫やらのプロパガンダが垂れ流しで放置され続けているのではないか。


by makoto900
亀井国民新党の仕掛けた茶番